はじめに...
発達障害の診断基準はなぜ統一されていない?
はじめに
発達障害の診断基準が完全には統一されていない理由は、主に以下の4つに分けられます。
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1. 発達障害は「スペクトラム(連続体)」だから
発達障害は、「ある/ない」ではなく、「どのくらい傾向が強いか」「どの場面で困り感があるか」といったグラデーションのある特性です。
そのため、「どこからが発達障害と診断されるか」は、ある程度社会的・文化的な判断が含まれます。
たとえば:
• ある文化では「おしゃべりすぎる」とされる人が、別の文化では「社交的で明るい」と評価されることも。
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2. 診断基準が複数あり、国や専門分野で使い分けられている
代表的な診断基準には以下の2つがあります:
• DSM-5(アメリカ精神医学会)
• ICD-11(世界保健機関=WHO)
この2つでも、定義や分類が微妙に異なるため、同じ人でもどちらの基準を使うかで診断が変わることがあります。
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3. 診断は「現れ方」と「困りごとの度合い」で判断される
発達障害は脳の構造的な違いが背景にあるとされていますが、MRIや血液検査でははっきり診断できません。
そのため、日常生活・社会生活でどのくらい困っているかという主観的・行動的な観察が診断の中心になります。
つまり、医師の問診や観察、本人・周囲の説明の内容により、診断結果が変わる可能性があります。
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4. 子どもと大人で「困り方」が変わる
同じ発達特性でも、
• 子ども時代は「落ち着きがない」とされていた人が、
• 大人になると「空気が読めない」「報連相が苦手」などに形を変える
といったケースも多くあります。
このため、大人の診断はより多様で、経過・適応の仕方によって判断が難しくなる傾向があります。
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補足:研究の進展とともに変化している
実際に、ADHDやASD(自閉スペクトラム症)は、過去10〜20年で定義や分類が何度も変わっています。
今後さらに、脳科学や遺伝学、AI診断技術の発展により、より客観的で統一的な診断ができるようになる可能性があります。