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発達障害人材採用におけるIQ検査の活用(運送・物流編)

はじめに


発達障害の方を運送・物流部門で雇用する際、WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)の検査結果を分析することで、その方の強みや苦手な点を把握し、適切な業務配置やサポートを検討できます。運送・物流業務では、空間認識力、処理速度、注意力、ルールの理解、体力的な持続力が求められます。



1. WAISの主要領域と運送・物流業務における評価方法


WAISは4つの主要領域で能力を測定します。それぞれのスコアが運送・物流業務にどう影響するかを見ていきます。

① 言語理解(VCI: Verbal Comprehension Index)
 • 高得点の場合:業務マニュアルや指示書の内容を正確に理解し、ルールを適切に守ることができる。伝票や指示書の確認業務が得意。
 • 低得点の場合:文章での指示理解が苦手な可能性がある。簡潔な文章や図表を用いた指示の方が分かりやすい。

② 知覚推理(PRI: Perceptual Reasoning Index)
 • 高得点の場合:空間認識力が高く、倉庫内での荷物の積み下ろしやフォークリフト操作、ルート計画が得意。
 • 低得点の場合:位置関係の把握が苦手で、荷物の積み込みや倉庫内の効率的な動線確保に時間がかかる可能性がある。事前にレイアウトを示したマニュアルを準備すると良い。

③ 作業記憶(WMI: Working Memory Index)
 • 高得点の場合:配送ルートや作業手順を記憶しやすく、間違いが少ない。伝票処理や在庫管理の作業も正確にこなせる。
 • 低得点の場合:作業の手順を忘れやすい可能性がある。チェックリストやマニュアルを用意すると業務がスムーズに進む。

④ 処理速度(PSI: Processing Speed Index)
 • 高得点の場合:作業スピードが速く、荷物の仕分けや伝票処理を迅速に行える。短時間での作業が求められる場面に強い。
 • 低得点の場合:作業スピードが遅く、時間制限のある業務では負担が大きくなる可能性がある。ペース配分を考慮したスケジュール管理が必要。



2. IQの評価基準と運送・物流業務への適性

 • IQ115以上(高い):ルート計画、在庫管理、荷物の積載計算、フォークリフト操作など、判断力が求められる業務に向いている。
 • IQ85〜114(標準):一般的な仕分け、ピッキング、配送業務を問題なくこなせる。作業手順が整理されていれば安定して働ける。
 • IQ70〜84(やや低い):単純な仕分けやルーティン作業が向いている。明確な指示と繰り返しの作業が得意。
 • IQ69以下(低い):複雑な業務の理解や臨機応変な対応が難しい可能性がある。シンプルな作業を担当し、手順を細かくマニュアル化すると良い。



3. 運送・物流業務での具体的な適性と業務分担

 • 倉庫内仕分け作業 → 処理速度(PSI)、作業記憶(WMI)が高い人に適している。迅速かつ正確な作業が求められる。
 • 配送ルートの計画 → 知覚推理(PRI)、作業記憶(WMI)が高い人に適している。効率的なルートを考え、計画的に業務を遂行できる。
 • フォークリフト操作・荷物の積載 → 知覚推理(PRI)が高い人に適している。空間認識力を活かせる業務。
 • 伝票・在庫管理 → 言語理解(VCI)、作業記憶(WMI)が高い人に適している。正確なデータ処理が必要な業務。
 • 単純な仕分けや補助作業 → 処理速度(PSI)が低めでも、作業手順が明確であれば対応可能。繰り返しの作業が得意な方が向いている。



4. 強みを活かす工夫とサポート方法


(1) 強みを活かす
 • 処理速度が高い人 → 仕分けや伝票処理などスピードを求められる業務を担当
 • 知覚推理が高い人 → ルート計画やフォークリフト操作を担当
 • 作業記憶が高い人 → 在庫管理や配送ルートの把握を担当

(2) 弱みをサポートする
 • 作業手順を明確化 → 視覚的なマニュアルやチェックリストを活用
 • 環境を整備 → 荷物の置き場や作業の流れを分かりやすくする
 • ミスを防ぐ仕組み → バーコード管理やデジタルチェックシステムの導入



5. まとめ

WAISの結果をもとに、運送・物流業務における適性を判断し、適材適所で業務を分担することで、発達障害の方でも物流部門で活躍できる環境を整えることができます。