はじめに...
就労移行支援事業の収益形態
はじめに
就労移行支援事業所の収益形態を以下に解説します。
就労移行支援事業所は、障害者が一般企業への就職を目指して訓練を受ける福祉サービスです。A型・B型とは異なり、利用者は「労働」ではなく、「職業訓練」を行います。そのため、事業収入(利用者の作業による売上)はなく、運営は主に公的支援(給付金)によって成り立っています。
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1. 収益の主な構成
就労移行支援事業所の収益は、①障害福祉サービス費(給付金) と ②自治体の補助金 の2つが主な収入源です。
① 障害福祉サービス費(国や自治体からの給付金)
就労移行支援事業所は、利用者1人あたりの支援に応じた給付金を国・自治体から受け取ります。
• 基本報酬(利用者1人あたり、1日約6,000〜8,000円)
• 成果報酬型加算(就職者の数や定着率に応じて加算)
• 就職者支援加算:利用者が就職すると1人あたり約10万円前後の加算
• 定着支援加算:就職後6ヶ月〜1年の定着率に応じた加算
• 個別支援加算(利用者の障害特性に応じた支援を行う場合)
• 送迎加算(送迎サービスを提供する場合)
→ 課題:
• 利用者の人数が減ると収益が低下し、経営が不安定になる
• 成果報酬(就職者数・定着率)が低いと、加算が減り利益が出にくい
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② 自治体の補助金
自治体によっては、就労移行支援の質を向上させるための補助金が支給される場合があります。例えば、以下のような補助金があります。
• 東京都の「障害者就労促進事業補助金」(支援プログラムの開発に対する補助)
• 地方自治体による独自の助成制度(職業訓練の教材費補助など)
→ 課題:
• 自治体によって補助金の有無が異なり、地域差が大きい
• 補助金が一時的なもので、継続的な収益源にはなりにくい
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2. 収益のバランスと経営の課題
(1) 収益のバランス
一般的な就労移行支援事業所では、
• 収益の 90〜95% が給付金(障害福祉サービス費)
• 収益の 5〜10% が自治体の補助金
となっています。事業所によっては、法人の自主事業(企業向け研修やコンサルティングなど)で追加収益を得るケースもありますが、基本的には給付金頼みの経営が主流です。
(2) 経営上の課題
• 利用者の確保が困難(競合が増え、利用者獲得が難しくなっている)
• 就職率が低いと収益が伸びない(成果報酬型加算が減るため)
• 支援員の人材確保が難しい(支援員の給与水準が低く、離職が多い)
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3. 持続可能な運営のための対策
① 企業との連携強化(就職率向上)
• インターンシップや実習の拡充(企業との連携を強化し、就職に直結させる)
• 特例子会社や障害者雇用企業とのネットワーク構築
② オンライン・デジタルスキル訓練の導入
• リモートワーク向けの職業訓練(プログラミング、データ入力など)
• IT・デザイン・動画編集など、高付加価値の職業訓練を導入
③ 民間企業向けの新規事業展開
• 障害者雇用に関するコンサルティング事業を展開
• 企業向けの研修サービス(障害者雇用のノウハウ提供)を実施
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4. まとめ
就労移行支援事業所の収益は、
• 「障害福祉サービス費(国や自治体からの給付金)」
• 「自治体の補助金」
の2つが主な柱となっています。事業収入がほぼないため、利用者の確保や就職率向上が収益を左右します。
今後は、企業との連携を強化し、就職支援の質を高めることが重要です。また、IT・デジタルスキル訓練を導入し、より高付加価値な職業訓練を提供することで、事業の持続可能性を高めることが求められます。