はじめに 発達障害の方を運送・物流部門で雇用する際、WAIS(Wechsler Adult Intelligence...
発達障害人材採用におけるIQ検査の活用(特殊清掃編)
はじめに
特殊清掃業では、作業の正確さ、衛生管理の遵守、チームワーク、体力、ストレス耐性、計画的な行動が求められます。WAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)の結果を分析することで、その方の強みや苦手な点を把握し、適切な業務配置やサポートを考えることができます。
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1. WAISの主要領域と特殊清掃業における評価方法
WAISの4つの主要領域を、それぞれの業務適性と関連付けて評価します。
① 言語理解(VCI: Verbal Comprehension Index)
• 高得点の場合:清掃マニュアルや指示書を正確に理解し、チーム内での指示出しや連携が得意。
• 低得点の場合:文章での説明が苦手な可能性がある。視覚的な手順書や動画マニュアルの方が理解しやすい。
② 知覚推理(PRI: Perceptual Reasoning Index)
• 高得点の場合:現場の状況を素早く把握し、効率的な清掃方法を考えられる。物の配置や動線を考えた作業が得意。
• 低得点の場合:作業の順番や動線の工夫が苦手な可能性がある。手順を細かく指示すると作業しやすくなる。
③ 作業記憶(WMI: Working Memory Index)
• 高得点の場合:複数の作業工程を覚えて的確に進められる。清掃手順や消毒ルールを正確に守ることができる。
• 低得点の場合:作業の手順を忘れやすい可能性がある。手順書やチェックリストを用意すると安定して働ける。
④ 処理速度(PSI: Processing Speed Index)
• 高得点の場合:清掃作業を素早くこなし、時間内に効率よく終わらせることができる。
• 低得点の場合:作業ペースが遅く、時間がかかる可能性がある。無理のない作業スケジュールを設定することで対応できる。
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2. IQの評価基準と特殊清掃業務への適性
• IQ115以上(高い):作業計画の立案や、現場ごとの最適な清掃方法の判断が得意。チームリーダー向き。
• IQ85〜114(標準):指示を守りながら安定して作業を進められる。一般的な清掃作業に適している。
• IQ70〜84(やや低い):単純な清掃作業やルーチンワークが向いている。手順を明確にすれば問題なく作業可能。
• IQ69以下(低い):複雑な作業や状況判断が難しい可能性がある。サポート体制を整えれば軽作業を担当できる。
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3. 特殊清掃業務での具体的な適性と業務分担
• 清掃作業(床や壁の洗浄・消毒)
→ 処理速度(PSI)が高い人が向いている。スピードと正確さが求められる。
• 遺品整理や貴重品の選別
→ 作業記憶(WMI)や知覚推理(PRI)が高い人が向いている。注意深く作業する能力が必要。
• 機材や消毒液の管理
→ 作業記憶(WMI)や言語理解(VCI)が高い人が向いている。使用する薬剤の種類や量を正確に管理できる。
• チームでの作業連携
→ 言語理解(VCI)が高い人が向いている。指示を正確に理解し、他の作業員と協力できる。
• 単純な清掃作業(ゴミの回収・搬出)
→ 処理速度(PSI)が低めでも、作業手順が分かりやすければ対応可能。繰り返しの作業が得意な方に向いている。
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4. 強みを活かす工夫とサポート方法
(1) 強みを活かす
• 処理速度が高い人 → 素早く効率的に作業できるので、時間制限のある清掃作業を担当
• 知覚推理が高い人 → 現場の状況判断が得意なので、柔軟な対応が求められる業務を担当
• 作業記憶が高い人 → 消毒ルールや機材管理など、正確さが必要な業務を担当
(2) 弱みをサポートする
• 手順を視覚的に示す → 写真付きマニュアルや動画を活用
• 環境を整備する → 作業ごとに明確なチェックリストを用意
• ストレスを軽減する → 作業スケジュールを柔軟に調整し、休憩時間を確保
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5. まとめ
WAISの結果を活用して、その人の強みに合った業務を割り当てることで、特殊清掃業においても発達障害の方が活躍できる環境を整えることができます。