はじめに 双極性障害を持つ方を新規開拓の営業職として障害者雇用する際、会社が行うべき合理的配慮は、以下のような施策が考えられます。 1. 体調の波を考慮した業務調整...
合理的配慮と特別扱いの線引き
はじめに
精神障害や発達障害を新規で雇用する上でたびたびテーマになるのが、合理的配慮と特別扱いの境界線をどのように設定するかです。とりわけ特例子会社のような障がい者が多数をしめる環境でなければ、周囲の既存社員から反感を買ってしまうリスクがあるからです。
合理的配慮と特別扱いの線引きを明確にするためには、以下の3つのポイントを意識することが重要です。
1. 合理的配慮の目的を明確にする
• 合理的配慮は「業務遂行上の困難を解消し、適切に働けるようにするための措置」であり、「個人的な優遇」ではないことを周知する。
• 例:ADHDの特性により「口頭指示だけでは忘れやすい」→ 「業務指示をテキストで補完する」(合理的配慮)
• 一方で、「本人が苦手な業務を一切免除する」は、業務上必要なスキル習得を妨げる場合があり、特別扱いに該当する可能性がある。
2. ルール・基準を統一し、可視化する
• 企業全体で「合理的配慮として認める範囲」を明文化し、社員全員が納得できる形で共有する。
• 例:「通院のための勤務時間調整」は合理的配慮の範囲とするが、「特定の人だけ残業免除」は業務負担の不公平につながるため、要相談とする。
3. 個別調整を行いながら、業務遂行に必要な責任は果たしてもらう
• 合理的配慮を適用したうえで、本人が期待される業務成果を出せるようサポートする。
• 例:「集中力が続きにくいので短時間勤務」は特別扱いになる可能性があるが、「集中力が落ちたら一時的に席を離れてリフレッシュOK」とすることで、業務への影響を最小限にする(合理的配慮)。
具体的な事例
ケース1:営業職のADHD社員のスケジュール管理
• 合理的配慮:「予定を可視化するためにカレンダーアプリを活用し、リマインダー機能を使う」「訪問先を事前に共有し、忘れにくいようにする」
• 特別扱いになる例:「上司が毎日細かくスケジュールを管理し、本人が主体的に予定を立てなくてよい状態にする」
ケース2:報連相の苦手な社員の対応
• 合理的配慮:「報告のタイミングを明確にし、文章での報告も可とする」「チェックリストを用意し、抜け漏れを防ぐ」
• 特別扱いになる例:「ミスがあっても本人の特性を理由に指摘しない」「上司が逐一確認し、本人が報告しなくても済む環境にする」
ケース3:音や環境に敏感な社員の対応
• 合理的配慮:「ヘッドホンの使用を許可する」「静かな作業スペースを確保する」
• 特別扱いになる例:「本人だけ特別に個室を提供する」「周囲の社員に無理な静粛を求める」
まとめ
• 「本人が業務を適切に遂行できるようにする」ための措置が合理的配慮
• 「本人だけが特別に優遇され、業務の公平性が崩れる」措置は特別扱い
• 会社として「どこまでが合理的配慮か」を明確にし、全社員が納得できる形でルールを作成・運用する
合理的配慮のガイドラインを策定し、全員が理解できる形で運用することで、企業側も社員も納得しやすくなります。