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発達障がいの基本情報⑶ ミス・忘れ・紛失対策

はじめに

前回、発達障がいの基本情報⑵では、接し方について解説して来ました。
今回はより実践的な対策についてご紹介します。
発達障がいの中でもADHD特性を持つ方は、パフォーマンスに大きなムラがあります。
注意力散漫になったり、勘違いをしてしまうと、業務上大きなエラーを起こして管理職を困らせてしたう事もしばしば。
前回同様予めお断りしますが、ADHDから完全にミスを取り除く方法は有りません。どんな薬物療法でも、コンディション改善でも、苦手な事や興味がない事をやると、必ずミスは起きます。
しかし、いくつかの策を講じれば、改善は可能です。これからそのポイントを3つご紹介します。

⑴業務構成・配分の再設定

簡単に言うと、やる事の種類を減らす事。苦手な業務を減らし、得意業務や出来る業務の比率を高める事です。
発達障がいは、やる事の種類が増えれば増えるほどパフォーマンスは低下し、苦手な仕事が多ければ多いほど、組織にとって致命的なミスを起こす可能性があります。
回数を熟せば出来るようになる等と期待しない方が良いです。
現状課題を抱えているのであれば、真っ先に着手すべきです。
既存社員の場合、配置転換や部署移動が必要になるかもしれませんが、本人の意思を尊重し、時間をかけて対話で聞き出して決めていくと良いでしょう。

(増やす業務)
・得意な事、興味がある事、自信がある仕事
・発信系の仕事・体を動かす仕事
・黙々と単純作業系の仕事
(減らす業務)
・数字の照合が必要な仕事
・受け仕事(顧客からの問い合わせへの対応等)
・臨機応変を求められる仕事
・ミスが致命傷に繋がる仕事

⑵構造化

人の構造化:
ケースに応じて相談する人を決める(再確認する)事です。
組織によっては、指示命令系統を飛び越えてのやり取りがなされがちですが、それでは優先順位を間違います。
全体の優先順位や、周りの状況を考慮して判断する能力が欠けている為、過度に仕事を抱え込んでしまったり、聞きやすい指示に従って、重要な課題が放置されてしまう元になるからです。

物の構造化:
発達障がいの中でもADHD特性を持つ方は、整理整頓が苦手で、机の上や鞄の中が散らかりがちです。散らかってしまうと、書類の紛失だけでなく、集中力の低下やミスを助長してしまいます
道具や書類の住所を決めて必ずそこに仕舞う習慣づけを行う事で、紛失対策と、整理整頓、業務の効率化に繋がります。
やり方についてはこちらから指定するのではなく、本人に考えさせてください。
過程ややり方にこだわりを発揮するので、こちらが考えたやり方をするより、自分自身で考案したやり方を実践してもらう方がより効果的で長続きするからです。

時間の構造化:
やる事の時間を決めて、その時間は毎日それ以外の事をしないと決める事です。
例)8:30〜8:50はタスク表の更新と上司への確認依頼。
その日の気分や、今この瞬間のやりたい事を優先してしまう特性があるので、仕事のフローや決めごとを設定する事で、ミスや忘れの防止に繋がります。
構造化における重要なポイントは、①上司と本人だけでなく、仕事で関わる全ての同僚と共有する事と、②自分で5W1Hで決めさせる事と、
③一気にやろうとせず、一つを2週間継続させて次を決める事です。
発達障がいは完璧主義の人が多いので、複数目標を立てて一気にやろうとしますが、必ず失敗します。


 

⑶コミュニケーションの最適化

組織の中で発達障がいを機能させるために最も鍵になるのが報連相の工夫です。発達障がいが配慮なしに業務を行うと以下のエラーが生じます。
生じます。
(優先順位を間違う。相談できずに課題を長期間抱え込む。勝手な判断で行動する。分からない事を放置する。分かってないのに分かったフリをする。これらは全てを単に「理解力不足」で片づけてしまうのは簡単ですが、もう一歩深い考察が必要です。
原因は理解力不足以外にも下記が考えられます。

集中力起因:
集中力の低さ。話している最中に違う事を考えてしまい聞き逃した。話の一部分が妙に気になって、以降の話が頭に入って来なかった。

精神面起因:
「いまの分かりませんでした」と評価が下がるのが怖くて言えなかったが、話が続いた。

これに対する対策は、
①理解したか確認して次へ進む事。②質問し易い雰囲気を作る事。③定期的に聞きにくい事を質問する為の時間を作る事
です。
普段から相談し易い人間関係を作って頂くのが基本です。一段ハードルを下げて頂いて、何回でも聞き直して大丈夫だよと伝えて頂いても良いです。
③は週一度、15分程度がお勧めです。

まとめ

今回は、発達障がいのミス・忘れ・紛失対策を3点ご紹介しましたが、すべてに共通するポイントは、自分でやり方を考えて実践する事と、欲張らず一つ一つ習慣化いく事です。完璧主義が発動して、一気に複数の試みをしようとしていたら、「一つ一つで良いからね」と管理職の方はその手綱を握って頂くイメージです。