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発達障害人材採用におけるIQ検査の活用(製造業編)

作成者: 佐々木創太|Mar 11, 2025 2:11:12 PM

はじめに

製造業で発達障害の方を雇用する際にWAIS(Wechsler Adult Intelligence Scale)の検査結果をどのように評価するかは、求められる業務の性質や職場でのサポート体制に応じて分析することが重要です。製造業では、主に物理的な作業や品質管理、設備の操作などが求められますが、その中でどのようにWAISの結果を評価し、できることや苦手なことを理解するかを以下に説明します。

1. WAISの主要領域と製造業における評価方法


WAISは、4つの主要領域(言語理解、知覚推理、作業記憶、処理速度)を評価します。それぞれの能力が製造業の職務にどのように関連するかを分析することで、発達障害を持つ方に適した業務内容を見つけやすくなります。

言語理解(VCI: Verbal Comprehension Index)
 • 評価方法: 言語理解の能力は、語彙力や言語的な推理能力、理解力を測定します。製造業では、マニュアルや作業指示書の理解、チーム内でのコミュニケーションに関わる部分です。
 • 高得点: 作業手順や安全基準、品質管理のための文書を迅速に理解し、他の従業員と効率的にコミュニケーションをとることができる。
 • 低得点: 言語的な説明や指示を理解するのが難しく、コミュニケーションにおいてサポートが必要な場合があります。図や絵を使った指示書が役立つかもしれません。

知覚推理(PRI: Perceptual Reasoning Index)
 • 評価方法: 知覚推理は視覚的な情報処理能力や問題解決能力を測定します。製造業では、機械の操作や設備のメンテナンス、物の組み立てなどで重要です。
 • 高得点: 目の前の問題や状況を迅速に把握し、作業の手順や機械の動作に関する理解が早い。パターン認識や効率的な作業の進め方に優れています。
 • 低得点: 複雑な機械の操作や問題解決に時間がかかる場合があります。簡単で反復的な作業が向いている可能性があり、複雑なタスクには追加のサポートが必要です。

作業記憶(WMI: Working Memory Index)
 • 評価方法: 作業記憶は、注意力や短期的な記憶保持能力を測定します。製造業の職場では、作業の進行状況を把握し、複数のタスクを同時にこなす能力に関連します。
 • 高得点: 複数の作業を同時にこなしたり、タスクの詳細を記憶して効率的に作業を進めることができる。業務のスケジュール管理や他のメンバーとの調整が得意です。
 • 低得点: 同時に複数の作業をこなすのが難しい場合があり、細かい作業の確認を繰り返し行う必要があるかもしれません。メモを取る、作業リストを使うなどのサポートが役立ちます。

処理速度(PSI: Processing Speed Index)
 • 評価方法: 処理速度は視覚的な情報を迅速に処理する能力を測定します。製造業では、ライン作業や品質検査、パーツの組み立てなど、迅速で正確な作業が求められる場面があります。
 • 高得点: 作業を迅速にこなし、スピードを求められる環境で高いパフォーマンスを発揮できる。ライン作業や機械の操作などで即応性が求められる状況に適しています。
 • 低得点: 迅速な作業が苦手な場合があり、時間内に終わらせるプレッシャーを感じやすいかもしれません。一定のペースで繰り返し行う作業が向いている可能性があります。

2. IQの評価基準と製造業への適用


WAISでは、各指標のスコアは標準化されており、平均値は100、標準偏差は15です。評価基準に基づき、それぞれの領域の能力を以下のように理解することができます:
 • 85〜115(標準的な範囲)
多くの職務において十分な能力を持っており、特に製造業の仕事でも問題なくこなせる可能性が高い。
 • 70〜84(やや低い能力範囲)
労働の効率や作業速度に支援が必要な場合がありますが、単純作業や定型的な業務に向いていることが多い。サポートを提供することで仕事をこなすことができる。
 • 69以下(顕著に低い能力範囲)
複雑な作業や複数のタスクを同時にこなすのが難しい可能性があります。手順が明確で繰り返し作業が多い業務に向いているかもしれませんが、特別な配慮が必要です。

3. 強みと弱みを活かすためのサポート

 • 強みの活かし方: 高得点を得ている領域(例えば、知覚推理や処理速度)があれば、機械操作やライン作業、問題解決が得意な領域に配置することができます。これらの強みを生かし、業務の効率を向上させることが可能です。
 • 弱みのサポート: 作業記憶や処理速度が低い場合、タスクの分割や視覚的なサポート(作業リスト、マニュアル、図示化された指示書など)を用意することで、業務の遂行がスムーズになります。繰り返し作業やルーチンワークが向いている場合、安定した環境を提供することが重要です。

4. 製造業における適職の提案


製造業では、物理的な作業や反復的なタスクが多いため、以下のような職務が適している場合があります:
 • ライン作業や組み立て作業(知覚推理能力が高い場合)
 • 品質管理や検査作業(作業記憶や処理速度が高い場合)
 • 機械オペレーション(処理速度や知覚推理が高い場合)
 • 単純作業や反復作業(低い作業記憶や処理速度でも繰り返しの作業が得意な場合)

発達障害を持つ方を製造業で雇用する際、WAISの結果を基にその強みを最大限に活かし、必要に応じて職務を調整することで、より適切な業務を割り当て、長期的な雇用成功に繋げることができます。