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発達障害の診断基準が確立されていないのは何故?

作成者: 佐々木創太|Mar 1, 2025 7:56:42 AM

はじめに

発達障害の診断基準が確立されず、医療機関に委ねられている理由

発達障害(ADHD、自閉スペクトラム症など)の診断は、統一された明確な基準がなく、医療機関の判断に委ねられている部分が大きいです。その理由を詳しく解説します。

1. 発達障害の多様性と個人差


発達障害の症状や重症度には大きな個人差があります。例えば、同じADHDでも以下のように特徴が異なります。
 • 衝動性が強いタイプ
 • 注意散漫が主な症状のタイプ
 • 両方が混在するタイプ

一律の診断基準では、こうした個々の違いを正確に評価できないため、専門医の臨床判断が不可欠になります。

2. 診断方法が主に行動観察や問診に依存している


発達障害は 血液検査やMRIなどの客観的な指標がなく、診断には以下のような方法が用いられます。
 • 医師の問診(成育歴や現在の困りごとを確認)
 • 心理検査(WAIS、WISCなどの知能検査)
 • 本人や家族のヒアリング

これらは主観的な情報に基づくため、医師の経験や診断基準の違いが診断のばらつきにつながります。

3. 環境や文化的要因の影響


発達障害の診断には、社会的・文化的な背景も影響を与えます。
 • 日本では「集団行動が苦手=発達障害」と捉えられがち だが、欧米では「個性」として受け入れられることもある
 • 学校環境によって症状が顕在化するかが異なる(自由な校風では問題が目立たず、厳格な環境では困りごとが増える)

こうした要因により、どこまでを「障害」として診断するかは、医師の判断に委ねられることが多いです。

4. 診断基準(DSM-5・ICD-11)の解釈の幅


発達障害の診断には、
 • DSM-5(米国精神医学会)
 • ICD-11(世界保健機関 WHO)

といった国際的な基準があります。しかし、これらの基準は抽象的であり、厳密な線引きが難しいため、最終的な診断は 医師の経験や解釈 に依存します。

5. 発達障害の診断が社会的サポートと関係している


発達障害の診断を受けることで、以下のような支援を受けられる可能性があります。
 • 特別支援教育の対象になる
 • 就労支援や福祉サービスを利用できる
 • 障害者手帳の取得につながる

そのため、医師は単に医学的な観点だけでなく、「診断をつけることで本人の生活がどのように改善されるか」も考慮するケースがあります。

結論:診断の標準化が難しい理由


発達障害の診断が医療機関の判断に委ねられる理由は、
 1. 症状の個人差が大きい
 2. 生物学的な診断方法が確立されていない
 3. 文化や環境の影響を受けやすい
 4. 診断基準が厳密でなく、解釈の余地がある
 5. 診断が社会的支援と結びついている

今後、脳科学や遺伝子研究の進展により、より客観的な診断方法が確立される可能性 がありますが、現時点では医師の臨床判断が重要な役割を果たしています。