就労継続支援A型事業所は、障害者が雇用契約を結び、最低賃金を保証しながら働く場を提供する福祉サービスです。そのため、A型事業所の収益は、一般の企業とは異なり「事業収入」と「公的支援」の両方から成り立っています。
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A型事業所の収益は、大きく分けて ①事業収入(利用者の労働による売上) と ②公的支援(行政からの給付金) の2つがあります。
A型事業所は、利用者(障害者)が実際に業務を行い、その成果を企業や個人に販売することで収益を得ます。主な事業形態として以下のようなものがあります。
• 請負業務型(企業からの受託業務)
• 清掃業務、DM封入、部品の組み立て、データ入力など
• 自社商品・サービス販売型
• パンやお菓子の製造販売、農業、カフェ運営、ハンドメイド商品のEC販売
• 施設外就労(企業の工場や事業所で働く)
• 工場の軽作業、スーパーでの商品陳列、ビル清掃など
→ 課題:
• 利用者の作業能力にバラつきがあるため、生産性が低く、一般の企業と同じ価格競争では不利になりやすい。
• 低利益の作業(単価の安い軽作業など)が多く、事業収入だけで運営を維持するのは難しい。
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A型事業所は、国や自治体からの給付金(障害福祉サービス費)を受け取ることで、運営を維持しています。主な給付金は以下の通りです。
• ① 基本報酬(事業所が利用者を受け入れた日数に応じて支給)
• 例:1人あたり1日につき約6,000〜8,000円(地域や事業所の規模によって異なる)
• ② 加算報酬(利用者の支援内容や事業所の運営状況によって追加支給)
• 例:定着支援加算(利用者が長期間働くほど増額)、送迎加算、職業指導加算など
• ③ 自治体独自の助成金(地域によって異なる)
• 例:東京都の「障害者就労支援事業補助金」など
→ 課題:
• 2018年以降、基準の厳格化により経営状況が悪化した事業所が増えた。
• 利用者の稼働率(稼働日数)が低いと、事業所の給付額も減少するため、安定的な運営が難しくなる。
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A型事業所の健全な運営には、事業収入と公的支援のバランスが重要です。理想的には、事業収入で運営費の50%以上を賄い、残りを給付金で補うことが望ましいですが、現実には事業収入が20〜30%程度にとどまる事業所も多いです。
• 最低賃金の支払い義務
• 事業収入が少ないと、最低賃金を支払い続けるのが困難になる。
• 人材確保の難しさ
• 支援員(職業指導員・生活支援員)を確保できないと運営が困難。
• 事業モデルの限界
• 利益率の低い業種に偏っているため、新しいビジネスモデルの導入が必要。
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A型事業所が安定的に運営を続けるためには、以下のような工夫が求められます。
• IT系業務の導入(データ入力、動画編集、ウェブ制作など)
• サブスクリプション型サービス(定期購入モデルで安定収益を確保)
• BtoB取引の強化(企業との業務提携で安定受注を確保)
企業の工場やオフィスでの軽作業を増やし、安定的な売上を確保する。
補助金や助成金を活用し、経営の安定化を図る。特に自治体独自の支援策を積極的に活用する。
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就労継続支援A型事業所の収益は、「事業収入」と「公的支援(給付金)」の2つで成り立っています。しかし、最低賃金の引き上げや基準の厳格化により、多くの事業所が経営難に陥っています。今後は、IT関連業務やサブスクモデルなど、収益性の高い事業への転換を進め、持続可能な運営を目指すことが重要です。